その一方、アカはアリエヌスを引き寄せつつ要塞都市から離れるように空を飛んでいた。アリエヌスたちに自らを“親玉アリエヌス”だと思わせるレヴェリテルムの効果を与えているため、アリエヌスたちはアカを“親玉アリエヌス”だと思い込んで追いかけてきているのだ。しかし、多くのアリエヌスにその効果を与えているため、アカ自身には相当な負荷がかかっていた。
さらに、アカはアリエヌスたちに追いつかれないよう身体が耐えられるギリギリの速さで飛行しているため、余計に身体や神経に負荷がかかっており、アカは早速意識が朦朧とし始めていた。
それでも、アカはアリエヌスたちを引き寄せて飛び続けている。モザとロディ、そして他のカテルヴァのアヴェスたちが親玉に攻撃させるため、この作戦を発案した自らを囮にするのが最善だと考えたからだ。
モザやロディたちが親玉を撃破し終えるまで、自分はアリエヌスたちを引きつけていられればいい。全ては、あのアリエヌスを倒し切るまで……とアカが自分自身に言い聞かせたとき、不意につんざくような悲鳴が聞こえた。
アカは思わずその声が聞こえた親玉アリエヌスの方を見やる。すると、背後を飛んでいる小型アリエヌスたちが急に悲鳴を上げてアカに飛びかかってきた。
「⁈」
アカは一気に飛行速度を上げてその攻撃を避けるが、ただでさえ身体の限界ぎりぎりだった飛行速度を上げたものだから意識を失いそうになる。なんとか体勢を維持しようとするが、その瞬間に気が抜けてしまったのかアカの身体は突然重たくなった。そして地上へ向けて落下を始める。
このままでは要塞都市外の地面に激突する——そんな考えがアカの脳裏によぎるが、不意に誰かの腕を掴まれる。アカが思わず顔を上げると、ベレー帽を被ったアヴェスことトログがアカの真上に浮いてアカの腕を掴んでいた。
「トログ!」
アカが驚いて声を上げると、トログは笑みを浮かべる。その直後、上空からアカを追いかけてきていたアリエヌスたちが、トログの上で見えない壁のようなものに弾かれた。