「そういえば、あの人…この間一緒にいた會津さんって人は?」
カシミールは不安を紛らわすように相手に聞く。
「今日は一緒じゃないの?」
しかし相手は答えることはなかった。
「…」
どうしよう、とカシミールは焦った。
何も言わないとはいえ、知っている人が雨に濡れているのだ。
どうにかしてあげたいと思うものの、イマイチ何も思いつかなかった。
そうしてカシミールはまごまごしていたが、不意に相手がお前、と口を開いた。
「結局なにがしたいんだ」
その言葉にカシミールはぴくりと反応する。
「な、なにって…」
「だから俺になんの用だって聞いてんだよ」
ぶっきらぼうな相手に対し、カシミールはえ、えーっと…と目を泳がせる。
それを見て相手はため息をつくと、すっくと立ち上がった。
そしてそのままカシミールの横を通り過ぎて、ここから去ろうとした。
「ま、待って!」
カシミールは思わず相手の左腕を掴む。
相手は少し驚いたように動きを止めた。