「…なんだよ」
「傘、持ってないのにどうするの?」
カシミールの言葉に相手は別にいいだろと返す。
「俺は“人間”みたいにする必要がないんだし」
放っとけよと相手はカシミールの手を振り解こうとする。
しかしカシミールはううん、と相手の腕を掴む手に力を入れる。
「知ってる人がずぶ濡れなのは嫌だよ」
その言葉に、相手は抵抗するのをやめた。
そしてカシミールの方をゆっくり振り向く。
「…お前」
俺と会うのはまだ2回目だろ、と相手はカシミールを睨みつけるが、カシミールは臆せずそれでも、と続ける。
「他人には、親切にするものだから」
カシミールがそう言うと、相手は暫く沈黙する。
そしてため息をついた。
「…そうかい」
んじゃ放っとけ、と相手はそっぽを向いてその場から離れようとする。
しかしカシミールは待って待って!と相手を自身の方へ引き寄せた。