「…そういえば、きみの名前、聞いてなかったね」
カシミールは黒い外套の人物の目の前のイスに座りつつそう尋ねる。
なんていうの?とカシミールに聞かれて、黒い外套の人物は嫌そうにそっぽを向いた。
「…先にお前が名乗ったら?」
黒い外套の人物がそう言ってカシミールを睨むと、カシミールは、あ、そうだねと呟く。
「自分はカシミール」
きみは?とカシミールが首を傾げると、黒い外套の人物は視線をカシミールから逸らしたままこう名乗った。
「ナハツェーラー」
「なはつぇーらー?」
カシミールが繰り返すと、ナハツェーラーは知らないのかとこぼす。
「知らない?」
どういうこと⁇とカシミールは聞くが、ナハツェーラーはいや、知らないならいいと続けた。
カシミールは思わず目をぱちくりさせたが、ふと気になったことを口にする。