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暗い過去とはさようなら〜幸せな今〜

とある年の10月初旬のある日、1組の高校生カップルはとあるテーマパークにいた。
彼女の方は満面の笑みを浮かべる一方で彼は、感情が顔に出ない様に気をつけつつも不快感を胸に秘めていた。
それもそのはずで、小学生時代にいじめを経験して一時期自ら命を断とうとするまで追い詰められた彼にとって、その当時のいじめっ子集団がいつも休日に遊んでいてつらい過去を思い出させるため、このテーマパークには行きたくないのだ。
その上で、彼を立ち直らせてくれたプロ野球チームがこの日の試の結果次第でその先のポストシーズンに出場できなくなる、という運命の分岐点とも言える重要な試合と彼女の誕生日が重なってしまって彼女を優先したのだ。
もちろん、彼女に喜んでもらいたくて彼が全額自腹で楽しもうとするのだが、午後8時を回った頃にとある事件が起きた。
2人がプロポーズの舞台として知られるお城の前を通りかかった頃、その野球チームが試合に敗れて順位が確定してベスト3に入ることなく公式戦敗退が確定したという、最悪の情報がスマホに飛び込んできてしまったのだ。
そして、彼は膝から崩れて慟哭し、球団こそ違うが野球ファン仲間で偶然居合わせた先輩2人に「ここは北国じゃねえぞ。でも、気持ちはわかる」と言われて2人の肩を借りて担がれる様にして退場した。
残された彼女は何が起きたのか分からず呆然とする中、彼は先輩2人から「今後のためにも彼女さんと別れたほうがいい。お前が潰れる」という助言を聞いて「これで確信に変わりました。でも、やっぱり悔しいです」と返すのが精一杯だった。
それからおよそ1時間、近くの街でその遊園地の前を通る路線の終点でもあるターミナル駅に着くまで泣き止むことはなく、一本後の電車に乗ってきた彼女に追いつかれた頃にようやく泣き止んだ。
そして、彼女に別れを切り出した。

月日は流れて2年後の9月28日、彼が応援する球団は4年ぶりの優勝を果たした。
彼は涙を流して飛び跳ねて球団に感謝を伝え、その後にチームは準決勝敗退をするも新シーズン開幕後は彼も気持ちを切り替えた。
そして、彼は5年ぶりとなるチームの2連覇に向けて愛する球団のために今日も笑顔で声援を送り続ける。

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