「きみは」
かすみは思わず言いかけるが、そのコドモは短剣をその場に投げ捨てるとかすみの方に向けて駆け出す。
そして右手に蝶が象られた黒鉄色の大鎌を出すと、まだ消えていない煙に飛びかかった。
しかし煙の中から先ほどの魚のようななにかが飛び出し、上空へ向かって逃げようとする。
「チッ」
コドモは思わず舌を打つと、背中に黒い蝙蝠のような翼を生やして地面を蹴り、飛び上がった。
そして翼を羽ばたかせて“なにか”に追いつくと、大鎌を思い切り振り上げてなにかを地面に叩きつけるように振り下ろした。
「…」
なにかはコドモの鎌の一撃を喰らって地上に叩きつけられると、静かに霧散し始める。
コドモはばさりと翼を動かして、かすみの目の前に舞い降りた。
かすみは目を丸くして、恐る恐る立ち上がる。
なぜなら、喫茶店から飛び出していったナツィと、同じ気配をしていたからだ。