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Specter children:人形遣いと水潜り その⑨

「割とガチでヤバいやつじゃん!」
「だから最初に言ったじゃん『殺しに来た』って」
「……そういや言ってたね」
水際に並んで座り、二人は話し合う。集まっていた河童たちは、既に蒼依からの情報をもとに捜索のため散開していた。
「そういえばさぁ、蒼依ちゃん」
「何よ冰華ちゃん」
「子供さらうような凶悪な妖怪が、なんで子供の少ないド田舎にいるの?」
「いや知らないけど。隠れ場所多いからとか?」
「絶妙に頼りない……」
「仕方ないじゃんまだ高校生だぞ?」
しばらく意味の無い雑談を続けた末、二人はどちらともなく立ち上がった。
「取り敢えず……村戻るかぁ」
「何か手がかり無いかなぁー」

結果として、二人は何の成果も得られなかった。農作業の合間に休む老人、商店を利用する大人たち、村の数少ない子供たち、およそ出会えたすべての人間に、蒼依が『自由研究の一環で伝承について知りたい』という体で尋ねたものの、有用な情報は一切なかったのだ。
「……ダメだったねぇ」
「まぁ、仕方ないよなぁ……」
水潜家に帰還した二人は、冰華の自室に入ると揃ってベッドに身を投げ出した。
「疲れたぁ……蒼依ちゃん、今夜はうちに泊まる?」
「えー、あんま迷惑かけられないよ」
「大丈夫だよ、お母さんも蒼依ちゃんのこと気に入ってるし。蒼依ちゃん礼儀正しいんだもん」
「んー? いやぁ……まぁほら、いきなりお邪魔したわけだしねぇ……」
「めっちゃ良い子じゃん。……あ」
「何よ冰華ちゃん」
蒼依の問いかけに、シーツに手を付き、冰華が勢い良く身体を起こす。
「いやマジに何その勢い……」
「ねぇ蒼依ちゃん。今朝初めて会った時の話なんだけどさ」
「ん?」
「蒼依ちゃんの登場の仕方、変じゃなかった? 木から落ちたみたいな落としてたけど」
「あー……それは普通に、昨日の夜この村に着いて、宿も無いし適当な木の上で寝ただけだけど」
答えた瞬間、冰華が素早く蒼依を押し倒した。
「やっぱり今日はうちにお泊りしてもらいます!」
「……なんで?」
「オニがいるかもしれない危ない夜に、友達を外に置いておけるわけ無いでしょ!」
冰華に見下ろされながら蒼依は目を泳がせ、逡巡の末に、観念したように溜息を吐いた。
「あー……うー……うん。分かったよ、分かったから……」

  • Specter children
  • 本編は最低でも21話を超える模様
  • 何の成果も得られませんでした
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