0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 サマーエンカウンター ③

もちろん、夜の寿々谷公園はかなり暗いので普通の人にとっては近付き難い。
だが暗い中でも大丈夫な自分にとってはその方がよかった。
人気がない方が、自分にとってはやりやすいのだ。
そう思いつつ夜の公園を、両目を光らせつつ早歩きをしていると、後ろの方から誰かが走ってくる音が聞こえた。
自分と同じように傘を持っていなくて雨の中を走っている人だろうか。
そう考えつつ、自分はパーカーのフードを深く被り直す。
足音が近付き、自分を追い越す…そう思った時、真後ろから、ほい、という声が聞こえた。
振り向くと、そこには黒いパーカーを着てフードを被り傘を差した小柄な少女が、折り畳み傘を差し出していた。
自分は目を丸くする。
「使いな」
少女の言葉に自分はどうしたら良いのか分からずまごついていると、少女は遠慮はいらないと笑顔を見せた。
「この通り、こっちには傘あるし…明日回収するからさ」
少女はそう言って自らが持つ傘を傾ける。
こういう時は受け取るべきなのか、と自分は困惑するが、そうこうしている内に公園の入口の方からもう1つ足音が聞こえてきた。

  • ハブ ア ウィル ―異能力者たち―
  • この番外編は6年前(⁈)に投稿した
  • 小編を「雨の中」をベースにしたものです
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。