「おい、急に走り出すなよ…って誰こいつ」
少女の友達らしい走ってきた傘を差す少年が、こちらを見つつ少女に尋ねる。
それに対し少女はえ、と返した。
「いや、誰だか知らない」
「マジかよ」
少年は少女に対して思わず突っ込む。
しかし少女はいいじゃんと笑った。
「かわいそうでしょ、傘ないし」
少女が言うと少年はまぁそうだなと返すが、ふと、あっ、と何かに気付いたように呟く。
「…てかお前、早く帰らないと親にまた怒られるぞ?」
少年の言葉に少女は、はいはい分かってます~とにやにやした。
そして少女はこちらに向き直る。
「それじゃあね、ちゃんとこれ回収するから」
少女は折り畳み傘をこちらに無理やり押し付けると、自分の隣をそのまま通り過ぎていった。
少年はあっお前…と言いかけるが、彼の方を見る自分の視線に気付くと、じゃ、気を付けて…と少し会釈してから少女を追いかけていく。
自分と同じような匂いのする2人を、自分は雨の中見送っていった。