音が、聞こえる。
ピンポーン、と下の階の玄関からインターホンが鳴る音。
最初は無視しても問題のない訪問かと思って放置していたが、何度も何度もインターホンの音が鳴っているのを聞くとだんだん目が覚めてくる。
うっとうしい、と思いつつ伏している勉強机から顔を上げ、眠い目をこすりつつ愛猫のいる自室を出て階段を下る。
そして廊下を少し歩き、玄関の鍵を開けて扉をガチャリと開いた。
「…」
玄関先には、見覚えのある少女と少年が立っていた。
「よっ」
傘、回収しに来たよ、と目の前の小柄な少女は手を振る。
自分は思わず目をぱちくりさせる。
なぜなら、この少女は昨日傘を貸してくれたあの少女なのだ。
…確かに、昨日の晩この少女から折り畳み傘を貸してもらって、『明日回収する』と言われた。
しかし、少女に自分の家の住所なんか教えていない。
彼女が自分の家の近所に住んでいる気はないし、かと言って昨日の夜にあとをつけられた覚えもない。
どういう事…?と困惑していると、不意に少女があっ、と声を上げた。