「にゃんこ」
少女がそう言って玄関先でしゃがみ込んだのでパッと彼女の目線が向く足元を見ると、自分のすぐ側に濃い灰色のネコが座っていた。
自分は驚いて思わずそのネコ…ロヴィンを抱きかかえる。
それを見て少女はかわいいねぇと笑った。
自分はどうしたらいいのか分からずロヴィンを抱えたまま黙り込んでいたが、不意に少女の後ろに立つ少年がなぁネロ、と彼女に話しかける。
「暑いから早く回収しちゃおうぜ」
「それは分かってるけど~」
ネロと呼ばれた少女は立ち上がりつつ少年に対し口を尖らせる。
「ネコちゃんかわいいからその話をしてるのー」
「そんな事はどうでもいいから」
「どうでもよくない~」
2人が言い合う様子を自分は呆然と見ていたが、やがて終わりが見えなくなってきた。
そのため自分は思わずこう言った。
「…ねぇ、長話するなら上がったら?」
2人は話を止めてこちらを見ると、驚いたようにまばたきした。