「それじゃ、今日の目的は果たせたってことで、おれ達は引き揚げますかね」
ネロが折り畳み傘を受け取ったのを見届けてから、耀平はそう言って立ち上がる。
だね、と言ってネロも立ち上がった。
「じゃ、今日はありがとね」
えーと、アンタの名前は…とネロが言いかけたので、自分はまだ2人に対して名乗っていない事に気付いた。
「…黎、鞍馬 黎(くらま れい)」
自分がそう答えると、ネロはじゃあ黎、と笑う。
「またね」
それに続いて耀平もまたなー黎、と笑みを浮かべた。
家族以外の人間に下の名前を呼ばれる事が珍しすぎて思わず自分は呆然としてしまうが、そうこうしている内に2人は部屋の扉を開けて廊下へ出ていった。
自分は足元に座るロヴィンの方を思わず見やる。
ロヴィンはどうって事ない感じでこちらを見ていた。