今年優勝した伝統球団、阪神タイガースには「代打の神様」と呼ばれる選手がいる。
この肩書きは試合の終盤、ここぞという場面に代打として出場して試合を決着っさせることを期待される巧打の選手に付けられるものだ。
誰もが認める歴代選手としては7人、ファンによっては今の代打の神様の選手が闘病生活を経験していた間に代打として活躍していた選手を間に入れて8人とみなす人もいる。
しかし、そんな神様の進退に大きく関わる議題が実は今年の夏に出ていた。
それは、阪神タイガースも所属するセントラルリーグでの指名打者(DH)制度の導入だ。
それまでの試合であれば、「野球は9人でプレーするもの」というお決まりの話らしくピッチャーも含めた守備9人全員が攻撃時にバットを振る、つまりピッチャーもバッターとしてボールを打つという役目がある。
だから、試合の中盤以降で投げる中継ぎやリリーフと呼ばれるピッチャーの出番に代打を送る際の選手の人選と対戦相手との駆け引きがセリーグ各チームの監督の腕の見せ所であり、タイガースでは強打の選手を最後の代打の切り札として残すことでこの「代打の神様」という称号が代々受け継がれてきた。
ところが、DHが導入されると、このピッチャーが本来打つべき場所にピッチャー以外の別の選手、それも打つだけで守備には就かない選手を指名打者(英語ではDesignated Hitter,DH)という枠で起用しなければならない。
タイガースの場合は本拠地、甲子園球場に近隣の海から吹き付ける浜風と呼ばれる独特な風や、内野が土のグラウンドのため打球が地面に落ちた時の跳ね返り方が砂や砂利の粒が正確に揃っておらず打球の動きが予測困難という特徴的なスタジアムでプレーするため守備が特に良い選手と守備の指標はよろしくないが打撃は非常に良い選手に分かれる傾向がある。
つまり、他球団を含めたファン目線では阪神には守備がよろしくなくて指名打者に回すべき選手が多いけれど、この枠に入る選手は原則1試合1人になるため、試合の駆け引きの一つとして考えられる「DHの代打」として現行の代打の神様を出場させるのか、それとも指名打者の枠に代打の神様をそのまま当てはめてしまうのか。
ファンの疑問に後々のプレーでチームが答える、という構図は野球が生む筋書きのないドラマのシーンはいつまでも続く。