露夏が歳乃の元に連絡してから数分。
午後の陽の差す路地裏を、ナツィは黒い翼を広げて宙を滑るように飛行していた。
先程カプリコルヌスに追い詰められかけた時に、術式を組み込んだ短剣から撃ち出した火球に魔力を極端に込めたことで意図的にそれを暴発させて煙幕を生成し、それでカプリコルヌスの視界を封じてその場から逃げ出したのだ。
とはいえ、カプリコルヌスとの戦いで身体のあちこちを痛めているのは確かで、なんとか飛行はできているものの空中で体勢を維持するので精一杯である。
また、路地裏ゆえ上に電線が何本も存在するせいで下手に空高く舞い上がることができず、あまり速度も上げられない。
かなりの速さで今にも追いつかんばかりに飛行し、追跡するカプリコルヌスをかわすのは至難の業だった。
「っ!」
不意にナツィに向けてカプリコルヌスがなにかを投げつけたので、ナツィは慌ててそれを避ける。
一体なにを…とナツィが思ったとき、不意に身体が重くなった。
なにが起きたのか分からず地面に落下するナツィは慌てて翼を動かすが、飛び続けることができずそのまま地上に落下してしまった。