「お前さん、最近何かあったのか?」
「えっ」
わたしはどきりとして、師郎の方を見やる。
師郎は目線だけわたしの方に向けて、いや、なぁ…と苦笑した。
「今日はいつもの時間帯にいつもの場所にいなかったから、個人的にちょっと気になって」
師郎はそう言ってペットボトルのフタを閉める。
わたしは師郎に自分の考えを読まれたと思って焦ったが、そうでもなかった事が分かって心の中でホッとする。
「…別に、今日はたまたまだよ」
ちょっと家を出るのが遅かっただけ、とわたしは作り笑いを浮かべた。
師郎は…そうかい、とだけ言って、クレーンゲームの台の前ではしゃぐネロ達の方に目を向ける。
わたしは”ヴァンピレス”との事を彼らにバレなくて済んだという事で安心していた。
何せ、彼女にこの前会った事や”提案”の事をネロ達に話せば、わたしの記憶は奪われるのだ。