夏は早く長く、アブラゼミはしぶとく生きている。おそらく蝉の寿命が一週間だなんて嘘だと思う。猛暑、猛暑、猛暑…。三寒四温からの真冬日からの春後半、初夏の気温は当たり前だ。まるで今が夏みたいな言いぶりだが間違えない春だ。今言ったのは忘れてほしい、去年の話だ。
変な気温は、頭でわかっていても体は追いつかないみたいだ。
「あれ、沢本は?」
「風引いたって、なんかあれだよ、寒暖差アレルギーか。」
ふーん。
現代人は働き過ぎだ。
「あ、じゃぁ銀座の方まで行ってきます。」
おぅ、と一言言われ、資料だけ取ってすぐさま私は駐車場に戻った。初任給と貯めてきたバイト代で5年前に買ったSUV。ラジオは今日の渋滞情報を流す。
午前8:25分
ー海老名IC付近を先頭に上りに10kmの渋滞………ー
今日は三連休の月曜日。皆は帰宅ラッシュとやら私とは無縁の物にまんまとはまっている。
「まじか…」
一部が高速から時間短縮のために一般道に流れたらしい、少し混んでいる。
……………
完全に止まってしまった。私は今日の契約先と、会社に事態を知らせ1時間ほどの遅れを許してくれた。なんと心の広い。
周りをチラチラしていると車窓の向こうの車窓の向こうから手を振る人がいた
「あ、!さか…」気づいて窓を開ける
「酒井さんじゃないですか!」
『久しぶりだね』
学生時代のバイト先の店長である。
「混んでますねぇ。」一拍置いて酒井は懐から一本のタバコを取り出す『まぁ仕方ないよ。』足を組んで答えた。「酒井店長、タバコ変えたんですね。」ようやくこっちを見た。『あぁまぁ、あんまりうまくないけど、ニコチンとか少ないヤツにしてね、まぁいつかは、タバコを辞めたいな。こんな調子じゃ無理そうだけどな笑。』私は愛想笑いをする。
車が流れ出し、私は会釈をして窓を閉じようとした。
『あ!中木!』
「なんですか?。」すっと酒井は私を指さした。『今を生きろよ、じゃ元気にやれよ。』
「酒井さんこそお元気で。」
こんどこそ窓を閉め、アクセルを踏んだ。