冬は、日が暮れるのが早い。
それは当たり前なのだが、それ故に夕方の薄暗い時間帯以降はなにが起きるか分からない。
…例えば、得体の知れない人に遭遇する、とか。
だから気をつけなさいとよく言われるのだが…
わたしは今、そんな”誰だかよくわからない人”と寿々谷駅前の喫茶店にいた。
「…大丈夫?」
なにか飲み物でも頼む?と、喫茶店のテーブルを挟んだ向こうに座る男の人はそう尋ねる。
「い、いえ、お気になさらず…」
わたしはそう答えるのに精いっぱいだった。
というのも、3日前に受けたヴァンピレスの提案を丁重に断ろうとした所、見事に彼女の逆鱗に触れて追われることになり…そしてこの青年と出会って、この喫茶店に連れられてきたのだ。
正直自分でも情報が多すぎて、整頓できない節はある。
特に、なぜこの男の人はわたしを喫茶店に連れてきたのだろうか。
そもそも、わたしはこの人と全くの初対面で、さっきぶつかりそうになった時に初めて遭遇したのだ。
そんな人がなぜ…まるでヴァンピレスから逃げるかのようにわたしの手を引き、そしてここまでやって来たのだろう。
まさか、この人は…