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第一部【FANATICALとADDICTED】p.18

「聞こえてたでしょ」

 アッドは無言で力なく首を縦に振った。主な外傷を視診し、腕の具合を診る。

 傷口は内側だけ体液にコールタールのような粘性の高い液体が混ざって蠢いている。その粘液はディソーダーの体液に酷似している。大きな傷の出血を止め、組織の再生を速めているものこそがこの粘液である。
 一方ケロイド部は溶け固まってしまってなかなか再生が始まらないようだった。赤茶色の断面から黄色っぽい半透明の液体が滲み出ているだけであった。なお、四肢の欠損となると、完全な再生を待つより、すでに再生が始まってしまった部分やそれを阻害している部分を取り除いて、元の腕の接着を待つ方が早い。

 傷の様子をカルテに書き込んでいると、アッドが独り言のようにぼそぼそと話し出した。

「……なんでファナは、あんなに俺のこと好いてくれるんですかね」
「そんなのあなたが一番分かってるんじゃないの」
「分かんねっすよ。俺はすぐファナに怒鳴るし、手ェ上げるし」
「ファナがそれを狙っていろいろやってるんでしょ」
「でも俺は、ファナに怖い思いさせたくない。ファナ、俺が殴ると、すごい嬉しそうな顔するんすよね。でも、同じくらい怯えた顔する。その、嫌がってんのに無理やり俺のこと受け入れようとしてるんだって、なんか無性に腹立って、余計に止まらなくなる」

 アッドは拳を強く握りしめた。

 ――ファナに腹が立つのではない。ファナが受け入れてくれることにあぐらを掻いて、彼女が深層心理で最も恐れていることを繰り返し、洗脳してしまっているのを理解しているのにやめられない自分に腹が立って仕方ないのだ。自分に対する怒りを外部に向けてしまうことに腹が立って仕方ないのだ。

  • 彼らが処分されるまでの物語
  • LINkerWorld LINearWaltz
  • あまりにも久しぶりですすぎる
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