「あなたたち、今回ちょっと大きい怪我しちゃったわけだし、他のペアたちもいる部隊で戦わない? 今回も本来分隊で相手する規模だったわけだし……」
「絶対やだ!」「絶対嫌です」
2人の声がそろって、職員はつい失笑した。
「他のヤツは目障りです。邪魔」
「ファナが『間違えて』そいつらのこと殺してもいいなら勝手にして」
アッドはつまらなそうな態度で肘をつき、ファナも何か追い払うように手を払いながら言う。反応が本当にそっくりだ。
「……なんか、もう、ほんと仲良しね……」
職員が呆れて零すと、ファナが一気に喜色満面になり、饒舌になった。
「そうよ、世界一ね! ファナにはアディくんだけいればいいの。アディくんもファナだけいればそれでいい。ね、そうでしょアディく……あ」
ファナは途中で言うのをやめて、また俯いてしまった。アッドはその様子に気まずそうに首の後ろを掻く。
「あー、えっと、そう。そうだよ。ファナ」
優しい口調に、ファナの目に盲目的な輝きが戻った。
「アディくん……!」
「わっ!」
途端、ファナはアッドの胸に飛び込んだ。背もたれもない椅子に座っていたわけだから、隻腕のアッドが彼女の身体を支えられるわけもなく、バランスを崩して床に倒れた。
「ちょっとファナ、気をつけなさいよ」
「やっぱりファナの大好きなアディくんね!」
「あっはは、俺の可愛いファナ、俺も愛してるよ。……さっきはひどいことしてごめんな?」
「いいのよ、怒ってるアディくんもかっこいいわ」
「俺も泣いてるファナも可愛くて好きだけど、こうやって幸せそうにしてるファナはもっと好きだよ」
「……お二人さん、それ、腕治してから『部屋で』やってくれる?」
職員は見てられないとばかりに額に手をやって眼を逸らした。
正直この2人は放置して次の仕事に移りたかったが……そんなことをしたら一晩医務室を貸し切りにしなくてはいけなくなるだろうから、ムードをぶち壊してやるしかなかった。
床に押し倒される少年とそこに跨る少女が、キスでもするのかという距離で見つめあうという状況は罷り通っていいものではない。だから一話冒頭でも邪魔が入ったのだ。これは世の摂理である。