「これは、俺が生まれ故郷にいた頃の話なんだけどさぁ」
放課後の教室に、一人の男子生徒の囁くような声が響く。彼の周囲には、クラスメイトの男子生徒が数名。
「俺、県外出身で、山の中のド田舎の村で生まれたんだよね。小学校まではそこで育ってさ。中学上がるタイミングで親の転勤でこっち引っ越してきたのよ。で、村での話なんだけど、村に『めっちゃ背の高いお姉さん』がいたの」
「へぇー、どんくらい? 175? 180?」
クラスメイトの野次に、少年はニタリと笑う。
「推定2m以上」
「マジで!?」「やっば!」「それもう半分妖怪だろ!」「いやそれは2m級の女性に失礼やろ」
口々に盛り上がるクラスメイトたちを制止し、少年は話を続ける。
「で、そのお姉さん、俺が出かけるといつもいつの間にか付き纏ってたんだよね。身体がデカい分、とんでもない大股でさ、俺がどんだけ走っても引き離せねえの。で、そのお姉さん、『あけて、あけて』って言いながら俺のこと追いかけてきてたんだよね」
「何を開けるんだよ……」
「それが俺にも謎でさぁ。いろいろ試したよ? 目、口、ペットボトル、ノート、虫かご、ジッパー……でも、お姉さんが反応することは無かったんだよなぁ……」
「普通扉とかじゃねえの?」
「……その手があったか」
「え嘘本気で気付いてなかったん?」
「それでな。そのお姉さんの不思議なところが、お姉さんいつも、途中で追いかけるの止めちゃうんだよな。突然ぴたっと止まって、そこからじっと俺のこと見送ってくれんの」
「……ってのが、お前の『イマジナリー・フレンド』かー」
先ほどまでの怪談大会のような空気から一転、空気が一気に和らぐ。
「へぇ~、でも人型なの良いなー。俺のIF(イマジナリー・フレンド)なんかパンタグラフだぜパンタグラフ」
「電車の上に付いてるアレとお友達やってたお前の神経が信じられねえよ俺ァ」
「俺は黒猫だったからまだ普通だな」
能力者養成校の教室の一室で繰り広げられていたそれは、どうやら『自分のイマジナリー・フレンドについて語る会』だったようだ。
「やっべ、俺この後用事あるんだった。じゃあなみんな、楽しかったよ」
最後に語り役になった少年、永江吉継は鞄を手に取ると、急ぎ足で教室を後にした。