「吉坊や、お友達は外に出たんだね?」
吉継が居間に向かうと、祖母が声をかけてきた。
「うん、2人は自分の目で村を見て回りたいんだって」
「そうかい、お菓子でも出してやろうと思ったんだがねぇ……」
「そうだ祖母ちゃん。もしかしたら日ぃ跨ぐことになっちゃうかもしれないんだけど、先輩たち泊めても良い?」
「もちろんさ。それじゃぁ晩ご飯は腕によりをかけないとだねぇ」
「ははは、お構いなく……」
雑談を交わしながらも祖母の向かいに座り、吉継は本題を切り出すことにした。
「そういえば祖母ちゃん、聞きたいことがあるんだよ」
「何だい、実習に関わるのかい?」
「うん。ねえ祖母ちゃん、“八尺様”って知ってる?」
祖母は僅かに目を見開くと、背筋を伸ばして吉継の目を見つめ返した。
「…………吉継や、お前、学校でどんな勉強をしてるんだい?」
「普通の勉強だよ……まぁ、ちょっと特殊な事情はあるんだけど……」
「…………そうかい。お祖母ちゃんにはその“事情”っての、教えてくれないのかい?」
吉継は数秒思案してから口を開いた。
「……祖母ちゃん。俺が“八尺様”の名前を挙げた瞬間雰囲気変わったけどさ。『実在する』って前提で良い?」
祖母は静かに頷いた。
「……そっか。祖母ちゃん、俺たちは“八尺様”を倒しに来たんだ……あるいは封印。だから、少しでも情報が欲しい」
その言葉に、祖母は天を仰いで溜め息を吐いた。
「……吉継や、お前の学校じゃ子供を危険に晒すのかい?」
「大丈夫だって、祖母ちゃん。大丈夫だからこそ、俺たちが来れたんだから。本当に駄目なやつなら、学生にこの話下りてこなかったはずだもん」
「……そうは言ってもねぇ…………自分の孫が危険なものに近づこうとしてるなんて、飲み込めないものなんだよ」
「でも祖母ちゃん。情報が無きゃ、避けられる危険も避けられないよ。頼むよ、先輩たちのためにも、知ってることがあるなら教えてほしいんだ。どんな奴なのか、何ができるのか、弱点なんかはあるのか、そういうの」
力説する吉継に目を細めると、祖母は立ち上がって台所に向かった。
「話せることはそりゃ、たくさんあるさ。長くなるし、お茶でも飲みながら話そうか」