僕は眠ろうとしていた。部活にも入っていない僕には、三連休の明日日曜日にも明後日にも予定などない。もちろん今日も。なのに、僕は早く寝る。そうなんか、そーいうプライド的な何かであろうか。
「もう寝るのか?」
父の質問に僕はうん、と無機質に答えた。
「明日5時半に起きろ」
「え?」
「どうせ明日も明後日も暇だろ?起きなかったら父さんが起こす」
なにかしてしまったのだろうか。いや、声は怒っていなかった、むしろ高揚感と言うべきであろうか、そんな含みを感じた。
今までの経験から早起きした時は、家族旅行か、修学旅行か、僕の収納付きベッドから落下してきっぱり目が覚めてしまった時くらいである。この経験から、なんとなく察した。僕にも無自覚に高揚感というべき感情が芽生えた。
翌朝、置き時計のアラームより数分早く起きた。
重たい瞼を擦りながら、顔を洗う。
物置から音がした。
「何してるの父さん」
寝入りそうな声で聞く。
「見れば、、よいしょっ、、わかるだろ」
クーラーボックスと知らないいくつもの釣具。こんなものが眠っていたのかと、僕の瞼はそれと対照的に開いた。
僕はすぐにウェアーや、シューズや、、、身支度をして、自身の釣竿を持って、飛び出した。
父はすでに運転席に居た。
「昔を思い出すよ」
父はそう言った。
僕は中身のある返事をした。
「うん」
136号線を、北上する。父の運転する黒の小型バンが映えるほどに道は空いていた。まだ陽もだいぶ低い。
熊坂ICから高速に乗る。
眠れなかったは、MP3プレイヤーから耳につけた有線イヤホンに経由してきこえる、ラジオの音のせいでない事くらいは、多少の自覚があった。
東名高速を走り抜け横浜へ、東京湾を渡る。どこへ行くのだろうか。
手動で再チューニングする。違うラジオが聞こえた。
左右ともに、といいつつ左側車線の日本では右側の太平洋など見えもしなかったが、内陸側にはこの朝の光の絨毯を航行するタンカーや貨物船が見えた。
千葉に入っても車は進む。一度パーキングで食事と休憩をとったくらいである。
シートベルトを不器用に指でこねくり回しなが問た。
「どこ行くの」
「鴨川」
一言であったが僕は満足である。