「どうしたの?疲れてるね、あははは」
「え、いや!!もう!!そんなこと!」
恥ずかしい!
よりによって伊藤君にバス停でひっくり返ってるところを見られるなんて!
すると伊藤君が、
「あれ…?」
「ん?」
「…西田そうた、好きなの?」
「え、うん!!」
「そうなんだ!いや、俺も好きなんだよね、西田そうた。」
「そうなの!?どの小説が好きなの?」
「えーっとねぇ…」
思わぬところで、伊藤君との共通点を発見した。
私たちは、結局バスに乗っても西田そうたの話をし続け、二人の最寄りのバス停に着いたらさよならを言った。
すごく満ち足りた気分。新しい親友ができたみたい。
いや、ちがう。
彼氏ができたみたい。
いやいやいや!!変なことを考えちゃダメだ。伊藤君はそんなこと、少しも思っていないよ。
その日から、私は多分、伊藤君のことが好きになった。