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どしゃぶりのバス停で 9

あの日から、私たちは西田そうたという共通の話題で、よく話すようになった。でも、きっと、伊藤君のことを好きだなんて思っているのは、私だけ。
伊藤君は私のこと、どうも思っていないだろう。
「ねえ、優里香ー」
「何ー?」
「あのさ、今日一緒に帰れる?」
「あ…ごめん。約束してて」
そうだよね…優里香は最近本当に私から離れてしまった。と感じているのも私だけかも。
親友だからと言って、ずっと一緒にいるわけじゃないでしょう?
優里香はそう思っているのかもしれない。
一人で帰る。
あかりは部活だそうだ。
他の子もいたかもしれないけど、なんかそんな気分じゃない。
一人でも平気です。
全然平気じゃないけど。
木村君はいい人だから、恨むに恨めない。
こんなことで木村君を恨むなんて、性格悪いけど。
言葉にしようのない不安。
言葉にしようのない悲しみ。
こういうのから逃げるために、私は小説を読む。
伊藤君と私を繋ぐ唯一のもの、西田そうたの小説を。
自然と涙がでてくるから、自分のことで泣いているんだか小説に感動しているのかわかんなくなってくる。
こうして、私はいつも、状況を変えようともせず、逃げてばかりだ。
バカだなぁ。
優里香は幸せなんだよ。
木村君はいい人なんだよ。
勝手にこんなことで泣くなよ。
私が優里香たちの幸せを奪う権利なんてないじゃない。

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