薊の叫ぶ声は悲鳴と化している。
震える朔は、それでもしっかりした面持ちで紗那の父を見る。
「さ、紗那殿のお父上。
しかし、そ、それでは母が殺したという確固たる証拠がございません。」
必死に大人の口調を真似る。
薺は肩で息をしていて、不安そうに子供二人を見上げていた。
「それは__お前達が鬼だからだ。」
空気が凍った。
紗那の父親の目は据わっている。周りを見れば、他の村人もそうであった。
「人間じゃない。俺達とは違う。
違う"力"を持っている。」
「な、何を…。」
「いつかボロを出すと思ってはいたが…こういった形で俺らに歯向かうとはなあ鬼共!」
再び薺を蹴り、そして踏んだ。顔を、だ。
朔は薊を庇い、見せないようにする。
「お前達もだ。いつまた、ここにいる誰かを殺すかもわからんからな。」
そう言うと、違う人が、朔と薊を連れ出す。
「やめて!
せめて二人は見逃してやってください!!」
「おーおー命乞いか!?」
「母様は殺してなんかいない!」
「だったら誰が娘を殺した!」
「母様じゃない!」
紗那の父親と薊は止まらない。しかし、力で薊が勝てるわけがなかった。
「ちょっと黙れ嬢ちゃん。君も母様のようにしてほしいか?」
「__触るな。」
何かの圧力がかかったような感覚。
深い翠の目で睨む兄に守られた妹。
その瞬間を、薺は見逃さなかった。
追伸:
9話目です。急に進展してきてます(笑)薺ママは見逃さなかったことで何をするんでしょう??
朔っくん、ヘタレキャラかと思いきや……?
早く本章に入りたい私です(¨;)笑
明日はセンター試験ですね。
受験生の皆さん、頑張れ!!