バス停に向かって歩く。
伊藤君がいるといいな!
いたとしても、こっちからは緊張して話しかけられないのだけれど。
あっ!!あのリュックは!
やっぱり伊藤君だ!
「相葉さん!」
「読んだよ!『愛の証』がとくに気に入った!!ああいう話、西田そうたにあんまりないよね!珍しいなって思って!!あ、あと『三日月にさよなら』も!切ない感じで…あ、ごめん…うるさい?」
「そんなことないよ、あはは。でもまだおはようも言ってないのに…そんなにあの本、気に入った?」
「うん!すごく!ありがとうね本当に!」
伊藤君は少し笑うと、
「俺も、愛の証、気に入ってるんだよね。」
と言った。
口では楽しそうな声を出してる。
でも、私は気づいてしまった。
伊藤君の目が悲しそうなことを。
こんなのきっと思い違いだ。
まさか、私と話すのが嫌なのかな?
いや、それとは違う。
この人は何か悩んでいる。
でもそんなこと聞けないし…
どうしたんだろう?
こないだから伊藤君は様子がおかしい。