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どしゃぶりのバス停で 16

雨が降っている。
今日は、伊藤君が発つ日。
あの時もらった、『君への物語』。
そのあとがきを、気分を紛らわすために読む。
あっ。
「この短編集は、あるひとりの女の人への作品なんです」
「そろそろお別れしちゃうんです、でも、僕はその人が好きなんです」
「きっとその人は気づいていないんです。僕が西田そうただっていうことを」
「こういう時だけ、顔を非公開にしているのを後悔しますよね」…

西田そうたも、こんな気持ちになるのか
私と同じじゃないか。
自然に涙がでて来た。
もう会えないのか…お別れなのか…何も言えないまま。
何気無く見た目次のページ。
…あれ?
愛の証
命のトリック
馬車で追いかけて
三日月にさよなら
本当

あいのあかし
いのちのとりっく
ばしゃでおいかけて
みかづきにさよなら
ほんとう

そして

『君への物語』というタイトル。

…!

まさか…いや…
そういえば最初に伊藤君と西田そうたについて喋った時…
「あれ…?」
「ん?」
「…西田そうた、好きなの?」
「え、うん!!」
あのとき、何か様子がおかしかった。

そして、こないだまで、伊藤君の様子がおかしかったのは…それは…ただ単純に引越しが悲しかったからだけじゃない。
気づいてあげられなかったからだ。

そして西田そうたの作品から孤独が伝わってくるのは、友達ができてもすぐに引越しで分かれてしまう寂しさからじゃないか?

これが偶然だなんて思えない。

雨なんか、どうだっていい。今なら間に合う。走れ!!

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