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どしゃぶりのバス停で 17

間に合わない
テニス部で鍛え抜いた足腰の力で、私はいつものバス停へとダッシュした。

あぁ…あんなに嫌いだった雨に感謝する日が来るとは。
雨のおかげでバスが遅れるに違いない。と、いうことで、私は、息切れしても走り続けた。

風邪引いたっていい。
どんな姿でも、間に合うのなら…それでいい。
頭を拭く暇なんてない。

バス停には、一人男の人がいた。見慣れた後ろ姿。見るたびに舞い上がりそうになった後ろ姿。
間に合った…!

今日なら話しかけられる。
初めて会った朝。
緊張して話しかけられなかったあの日。
「気になる」から「好き」に変化したあの日。
毎日のように一緒に喋って、ドキドキしていたあの日。
そして、『君への物語』をくれたあの日。

あなたは、たくさん思い出をくれた。
でも、

思い出だけで終わらせたくない。
今私が思っていること、全部を知って欲しい。

今なら言える。


「伊藤君……西田さん…!」

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