「…何でも見えるっていう__」
「遠くのもの、な。…鬼には、"力"がある。人間には無いものだ。」
あの日、誰もがそう言って、母を痛めつけていた。記憶が朔の中で甦る。
「僕にもある?」
「朔の歳くらいだと、もうじき出てくるさ。
__さっきの話に戻るがな、だから、人間を恨むのに筋違いな部分があるのさ。殺したのは事実だから。だが、それじゃ晴れないんだよ。…"力"を持つと云う事は、周りと"違う"と云う事。"違う"事が、軋轢を生む。
人間共は、恐くなったんだろうよ。"違う"者達がいることにな。」
蒼は何というだろうか。母を、自分達を信じると言ってくれた蒼は。何と、いうだろうか。
しかし、朔は見ていた。紗那の、無惨に殺されていく姿を。
だから、あの日の別れ際、何も本当の事を言えず、頷いただけで終わったのだ。
「だが、まあ人間だって、いい奴はいい奴だ。
お前達の親父さんとかな。」
「…え?」
追伸:
「え?」と云う表現がやたら他用されています。その言葉を使うことに特に理由はなく、純粋に癖なのですが、それにしてもさっくんはよく言いますね。あと、台詞でよく止まる(笑)
全て私の癖です。