思い詰めるような朔の気を晴らそうと話した話題に、思いがけない反応を朔は示した。
「え?って…聞いてなかったのか!?」
おじさんは驚く。それはそうだ。19年間も父について知らないだなんて。
「気にならなかったのか?薺に聞けなくとも…俺に何故聞かない?」
朔は哀しそうに微笑み、言った。
「後ろには、薊がいた。」
その返事に意味を取りかねていると、やっと箸を手にとる。
「母上が言わないって云うことは、何か理由があったんだ。それをわざわざ詮索なんてしない。
__いただきます。」
その大人びた横顔が、いつだかの"その人"に似ていた。
「お前さんは凪(なぎ)によく似ているよ。」
それは、朔と薊の父の名で。
その時、うつむいて見えにくかったが、朔は淡く紅に染まる。
会ったことがない、しかしそれでいて自分の父。恥ずかしいような照れくさいような、不思議な感覚が朔を包み込んだ。
「あの、おじさん__」