輪郭のぼやけた漆黒のカシミヤ
せせら笑いと共に僕を包んだ
棘だらけの思い遣り
木枯らし吹く度 匂い立った
複雑で怪奇な神秘の残り香
歳月が徐々に奪い去ったそれが
埋めた鼻先へ届くのは僕の記憶の置き土産
年を追う毎 解けるカシミヤ
申し訳程度に風を防ぐ
毛羽立った想い出の寄す処
例えばこれが千々に裂かれても
買い直すことを僕はしないでしょう
砕けてしまった貴方の優しさを
木枯らし吹く度 胸に刻むから
歯を鳴らす僕に重々しい溜息を吐いて
今度はちゃんと その腕で抱き寄せて