2月になり、三年生は家庭学習の期間に入っていた。だが試験を4日後に控えた俺は、今日も遅くまで学校の自習室に篭っていた。帰路に着いた時、すでに9時を回っていた。足取りは重い。俺は今、スランプに落ちいっている。過去問を解いても解いても解いても…一向に成績は上がらない。周りの奴らはどんどん合格している。焦りが出る。不安になる。俺はもう…ダメなのかもしれない。 陰々鬱々とした気分で、ふと駅前の本屋に立ち寄った。入り口付近には、チョコレートが、半額になって置いてあった。今日は2月15日。つまり前日はバレンタインデーだ。試験のことで頭がいっぱいで、そんなことすら忘れていた。売れ残ったチョコと今の自分の惨めさが重なった気がした。これも何かの縁かと思い、僕はそのチョコレートを手に取りレジに並んだ。
バレンタインデーか…2年前はギリだけど先輩からもらったっけ…。ぼんやりとそんなことを考えていたらレジの定員に呼ばれた。
「次の方どう……あっ!」
ん?となって定員を見た。先輩だった。
「うわー久しぶり!!元気してた?あ、今年受験だっけ!?」
先輩はまっ暗いぼくとは対照的に、まるで太陽のように明るく話しかけてきた。僕は軽く頷くことしかできなかった。先輩は僕の気分を悟ったのか、テキパキとレジ打ちを始めた。久しぶりに先輩に会えたのに会話も出来ない…本当に僕は情けない…。
「216円です!」
「あ…はい」
僕はうつむき気味にお金を出した。情けないな…情けないな…僕は本当にダメ……
「ほらっ!」
僕の心の声を遮るかのように、先輩がレシートを渡した。
そこには、
"がんばれっ!"
そう書いてあった。
僕は顔を上げた。先輩が、ニコッと微笑んでくれた。僕は涙が出そうになった。消え入りそうな声で…
「ありがとうございます」そう言った。そうしたら先輩が、
「ホワイトデーは3倍返しだからなっ!」と笑いながら言った!僕も笑いながら「はいっ!」
と言った。帰り道、僕の足取りは軽かった。未来への希望とともに、ホワイトデーはどうしようかと考えていた。そしてこの物語は、俺の妄想です(笑)