『10日目壱』
時刻は午前零時、夜はまだこれからだと言わんばかりの時間である。
そよそよ流れてくる風と熱気に風鈴がなるだけだ。
「どうです?麦茶美味しいですか?
知り合いのカフェテリアから頂いたのですが。」
「ええ、とっても。」
夜の星は数十年前に瞬くのを止め、消えてしまった。
街の光が空を消してしまったのだ。
佐奈伎の街は地方都市だが例外ではない。
その佐奈伎の街では、佐奈伎大社と森矢邸だけがまだ辛うじて星が瞬いていた頃の面影を残している。
この日、みゆりは話すことがあった。
「風麿さん、話す事が一つあります。」
「何でしょう?話してください。」
みゆりは口を開いた。