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鬼ノ業~本章(弐)

「あれからみんな疑心暗鬼。馬鹿だと思う。そして醜い。
己で疑い始めたものを…。」
今まで平和だった村が覚えた"疑う"と云う術。それと引き換えに"信じる"と云う術を失った。
何かを得るには、何かを失うのがこの世の摂理。しかしそれが、負の循環となってしまった。
朔が黙っていると、蒼は再び口を開く。
「朔と叔父殿は?」
朔は無理に微笑んで言う。
「おじさんはそこだ。」
指差す先は、未だ燻る炎。
蒼は察したように眼を伏せ、もう一人を待つ。
「薊はーーつい昨夜、家を出た。」
「何…?」
口にするのが辛かった。
「母上とおじさんを殺した人間を赦さないって。…消してやるって言っていた。」
蒼は悔しそうに唇を噛んだ。
「俺がもう一晩早く来ていたらーー」
朔は哀しげに微笑んで言う。
「そんな話はよしてよ、蒼。」
ーーもしもの話なんて、誰にも分からないのだから。
「それに、僕は、薊を止めると誓った。」
その決意は固いもので。
蒼はその眼を見て直ぐに悟った。
そして、言う。
「薊は俺の妹でもある。
…力を貸す。その為に来たんだ。」
朔は、情けなく微笑った。旧友が、あまりにも心強くて。
「よろしく。」
改めて固く握りあったその手は、何かを突き動かしたようだった。

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