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シューアイス『秋口の場合』

私はどこにも属さない。属さないということにすら属さない。ふと思い付いたこの無所属への憧れを私は必死に模写する。白いキャンパスにB2の鉛筆で濃く描く。書道室の、白く淡い墨が流れるような光が沸々と沸きだし、私以外を満たしていく。
白かったキャンパスは汚れていく。私に汚されていく。私はりんと姿勢を正し、睫毛の伸びきった瞳で無所属を模写する。私の胸が膨らんだ頃に私は髪を伸ばすことをやめた。私の髪が色めき立つ頃に私は口紅を塗ろうと思う。私はそうやって関わっていたい、何事にも。りんと姿勢を正し、背徳的な行為に耽っていたい。口を真一文字に結んで、暖かい季節が過ぎ去るのを待ちたい。私は高校生でいたい。私は清く正しい学生でありたい。木の枝をはむ様な恋をして、ガチャガチャの愛憎を思い出にしたい。私の髪が色めき立つ頃に私はもう一度待ってみたい。

木造のドアをガタガタと鳴らし後藤田が書道室に入ってきた。私は振り返り、にへら、と笑う。後藤田は、仏頂面を構えて見下ろす。後藤田の無骨な肉体を見上げる。変態的な愛はいらない。私は無所属を振り返らない。

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  • B2ではなく、2Bでしたね。。。恥ずかしい。美術の内申が2だったことがバレちまうぜ。

  • 2B、使いやすいんですよね。
    僕は無意味に4B一本で挑んでいた時期がありましたが。
    なんだか、話の筋が、よりメンタルの柔らかい部分に触れてきましたね。
    シューアイスの皮とアイスの間のような、そんな感覚がします。

  • あきやさん 4Bってどんなのなんだろうか。。。HBと2Bしか使ったこと無いです。ガリガリと音がするんだろうか。
    秋口さんはちょっと特別です。こんな女性がいたらいいな、っていう願望が滲み出ております。次回からは主人公がまたシューアイスシューアイス言い出す予定です。