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ぬいぐるみ

昔からふわふわのものが好きだ。毛布、綿アメ、そしてぬいぐるみ。特にクマのぬいぐるみに目がないんだ。家には数えるだけで30体以上いる。旅行先では、限定のクマを絶対に買ってしまう。高かろうと安かろうと可愛いものは可愛いと決まってるのだ。
今月は私の誕生日。20歳のお祝いに大きいのを買ってもらうことにしてた。好きなものを選んでいい、と言われ1人でぬいぐるみ達を眺めてた。
「どれも可愛いなぁ。」
「あれ?高橋?」
「長瀬くん。どうしたの?」
偶然にも高校が同じだった長瀬くんに会った。
「妹のプレゼント買いに来たんだよ。」
「へぇ。優しいね!」
「まぁな。お前は?」
「私は、自分のを選びに来たの。」
「1人で!?」
「う…。そういうこと、言わないの!」
確かに家族連れが目立つ店内で1人は目立つ。
「しょうがないから俺もついといてやるよ。」
「え?」
「一緒に選ぼうぜ。」
私は好きなのを欲しいのに。なんて思ったけどちょっと嬉しかった。その後は、長瀬くんの妹ちゃんのを選んで私のを選んだ。目が丸くて、顔がきゅっとしてるんだけどそこが愛嬌あって。最高に気に入ったのを見つけられた。両親から貰ってたお金で支払った。プレゼント、なんて言っても自分で買うのがうちのスタイル。長瀬くんは、そんな私をじっと見てた。
「高橋。ちょっと待ってて。」
「ん?買い忘れ?」
「そうそう。あと、そのクマ貸してよ。」
彼が指さしたのは、さっき買った大きいクマ。必死な彼に貸してあげて待つこと30分。店内から出てくる親子が羨ましくてしょうがなくなった頃に彼は戻ってきた。
「高橋。ごめん、待たせたな。」
「もう、何を忘れてなの?」
「大事なものだよ。」
そう微笑んで彼は一歩下がって声を張り上げた。


「高橋。誕生日おめでとう。ずっと好きでした。ぬいぐるみが大好きな君が可愛くて、そして好きです。付き合ってください。」


一瞬、時が止まった。ふわりと風が吹いたとき、時間が戻ってきた。彼は、綺麗にラッピングしたその大きなぬいぐるみと小さなペンダントを渡してくれた。

「俺がお前にしてやれることは、大きなものを買うことじゃないかもしれないけど寂しい思いは絶対にさせない。こんな俺じゃダメかな?」

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  • 彼の言葉に驚きと嬉しさと切なさと。いろいろな感情が全て混ざって襲いかかってきた。私は、ずっと1人だった。寂しさを埋めるようにぬいぐるみを集めた。そういうのが全てわかられた気がした。


    「私でいいの?」

    「お前がいいんだ。」


    自惚れていいのなら、今までの私にとってのクマのぬいぐるが全てのように、彼にとって私がそうなのかもしれない。

    彼を信じることにした。1人よがりに生きることをやめることにした。


    「一緒に生きてほしい。」


    ありきたりの愛の言葉は言えない。これが、今の私の精一杯。ぬいぐるみに閉じ込めてた気持ち。