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鬼ノ業~本章(拾漆)

凜の姿が小さくなり、米粒大となると、やっと'大おばば'は口を開いた。
「まず中へ入りな。」
口調こそ乱暴ではあるが、声音は柔らかい。二人は促されるままに木の一軒家へ入った。
座るなり茶をたて、慣れた手つきで出す。そしてこう言った。
「若い旅人たァ、珍しいねェ…。」
彼女は、一番最初にお茶に口をつけた。その様子を見た朔は尋ねる。
「申し訳ないのですが…僕達を残した理由を図りかねます。
教えては頂けないでしょうか。」
ふむ、と呟き微笑む。それは愉しそうな笑みでもあり。
「まずは自己紹介からいこうかねェ、
アタシはこの村じゃ'大おばば'と呼ばれているが――名を、藤と申す。」
それは、村人の誰にも明かしたことのない名だった。
「アンタ達は、朔と蒼って言ったかい?」
こちらの自己紹介はまだのはずである。すると藤は、
「風の便りだァね。」
あっけからんと言い放った。

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