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卒業証書

 入学シーズンだが、あえて卒業式のことを書こうと思う。なぜなら雨だから。
 わたしの卒業した高校の卒業証書はオムライスだった。オムライスに文言がケチャップで書かれていて、印鑑は焼き印だった。ほとんどの卒業生は持ち帰るが食べて帰る者もいた。わたしもその一人だった。
 卒業証書であるオムライスを完食し、校門を出ると、卒業したんだなと実感できた。就職は決まっていなかったが不安はなかった。仕事なんて飯が食えればいいと思っていたし、オムライスは冷めていたが美味かった。問題なんてものは妄想でしかないのだ。いや、すべては妄想なのだ。だったら楽しい妄想をしていたほうがいい。
 母校は、わたしが卒業してから十年経ったぐらいのころ、廃校になった。あのオムライスが食べたいという理由で受験する者も多かったのだが、少子化には勝てなかったようだ。
 四十過ぎても定職に就かず、こんな文章を書いて喜んでいられるのは、あのオムライスのおかげだと思っている。

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