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鬼ノ業~本章(弐拾捌)

「いつ気がついた。」
朔は立ち止まる。遠目に見えるのは、訝しげに朔を見ていた方の岡っ引きだ。
朔はため息をつく。
「だいたい、自分の身に危険が及ぶであろうことは予測していました。貴方にあのような眼で見られてからずっと。
―僕達に罪を被せて解決ですか。」
相手がゆっくりと近付いてくる。
「いや…それだけではぬるい。お前たちは一応、人間としての体だ。人間を犯人に仕立てあげ、此の手で裁いてやるのさ。他の奴等も同罪としてな。」
丁寧に弓を構える。此の距離ではずす事はまずないだろう。――相手が朔でなければ。

視えた三秒後の世界に、朔に矢が刺さる未来はない。

射たのを見るなり体制を低くし、素早くもう一度射た矢を空中で翻りかわす。再び向けられたものは矛によって進むことを阻まれる。
片膝を立て、矛を相手の顎下に突き付けた朔。
その岡っ引きは、ただただ動揺する。
「ぬ、主は何者だ!?」
朔は目をそらさずに、細く伝える。
「僕は、ただの旅人だ。」

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