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鬼ノ業~本章(弐拾玖)

岡っ引きが持っていた縄で相手の手首を後ろで巻き、先の場所へ戻る。既に蒼はいて、その横でお縄となっているもう一人は気を失っている。頬からは紅いものが垂れ、乾ききっていない。
「物騒な…。」
こう呟く朔を視界に入れた蒼は、少々驚いて見せる。
「怪我無し?お前凄いな。」
「凄いというか…武術だって顔に一発入れるようなものはなかったはずだけれど。」
苦笑いする朔。
岡っ引き二人を並べ、
「姐さん迎えにいくか。」
「そうだね、」
一先ず落ち着いたかと思った矢先だ。
『―――!?』
藤が出てきたのだが、もう一人、知らない男がいる。
その男は、手で藤の口を塞ぎ、首筋には包丁を当てている。抵抗できない状態で、藤はぐったりしているようにみえた。
「男二人も揃っているってのに、女一人守れないとはなあ。」
もう一人いるとは聞いていない。
「おい朔、どういうことだ。」
相手からは視線を外さないものの、多少の焦りが窺える。朔も同様に。
「まずはそいつ等二人を連れてこい。
この女がどうなってもいいのか!?早く!」
人質を取られてしまっては。
まず先決は藤の安全だが――

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