冷静に考えると分かるんです、 茜色した蜻蛉が自分の指にとまらないのを僻むのと同じことなのだと ため息をつくのは道理でないと 瞳の中に表情が映るほどの近い距離もないあの人が誰と寄り添っていようと、 自分にはひとつの景色を切り取ったものに過ぎないと 急速冷凍をしてみれば、思い通りにいかない気持ちも落ち着くのかしら、 そう思って踵を返そうとしたのです けれども、そこは空っぽだったのです それはもう、後退を尻込みしてしまうような空虚だったのです