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カジュアル

 夕方、目覚めると、ぼくは蛙になっていた。繁殖シーズンでもなかったが、けろけろ、と鳴いてみた。ぼくの鳴き声は低く、いい声だった。調子に乗って、けろけろ、けろけろ、鳴いていると、雌の蛙が近づいてきた。雌の蛙はぼくよりはるかに大きく、少し、恐怖を覚えた。ぼくは雌の背中に乗り、産卵を手伝った。手伝ううち、ぼくの身体は雌の背中にめり込んでゆき、最終的に目だけを出す格好になった。産卵を終え、じっとしている雌をねらってへびが近づいてきたのだけれど、雌はじっとしたままで、一体化して動けないぼくは雌と一緒に、のみ込まれた。胃液に解かされながら、カジュアルに産卵の手伝いなんてするものじゃないな、と思った。

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