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背伸びの恋と見下した恋 続

この時間帯なら、もう肌も気持ち悪くならないかしら、そう思って窓を開けてみるが僅かな風はまだ生温い。
「鍵かけるわよ。」
司書さんの声で我に返り、そそくさと図書室を出た。
「全く健気ね、あんなに毎日毎日通い詰めちゃって。」
「迷惑なだけです。」
「またまたぁ〜。邪険にも出来ない癖に。」
ぐっと言い返す言葉が詰まった。何も、本を閉じるだけで去っていく中途半端な気の利き方が気にくわない。
うっとおしいものはうっとおしくだけいれば良いものを。
「知ってる? あの子毎日ね、あなたが来る前に源氏物語の漫画読みあさってるのよ。図書室どころか授業にもほとんど出てなかったそうなのにね。」
健気ね〜、と、彼女は再び笑った。
それでも、漫画は漫画だしあんなバカ丸出しの感想なんて耳が腐る。司書さんは司書さんなりに楽しんでいればいいと思ったので、私はさっさと昇降口に向かった。
面倒だ。とても、物凄く。
けれども、仕方がない。私は本を読みに行っているだけ、と言い聞かせて学校を出る。
爪先の音、とんとんとん。
蝉の声、みーんみーんみーん。
ため息を吐いた。
夏はまだまだ長い。


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