土曜日、女子の電話番号をゲットした。三日後の夕方、電話してみた。出なかった。まあこんなもんだ。どうせ財布には千円しかないのだし。千円じゃデートは無理だ。中学生じゃないんだから。
だいたいどんな娘も、電話番号は教えてくれる。だが、出ない。よってわたしは電話番号を消去することになる。
まあいいや。いい娘だったし。電話番号はお守り代わりにとっておくことにしよう。
「あきらめるのかい?」
蛸が言った。
「いや。メールかなんか、返ってくるかもしれないとは思ってるんだけど」
「まあそうだよな」
蛸はぼそり、つぶやくように言って、たらいに戻った。
「あんたはきっぱりあきらめられるほど潔くない。かといってしつこく電話するほど無神経でもない。俺を食べずにこんなたらいで飼ってくれるような奴だ。だいたいわかるよ」
わたしは蛸の見解についてとくにコメントすることもなく。しばらくじっとスマホの画面を眺めていた。画面に変化はなかった。連休ももうすぐ終わる。そうめんでもゆでよう。