下と前の中間くらいを見ながら歩いていたら頭を軽く撫でられた感触がした。
見ると白地に黒で一筆書かれたシンプルなのぼりだった。「かき氷はじめました」と書いてある。
もうそんな季節なのか、と食う気もないのに店の中を覗くとダルそうな兄ちゃんと目があった。何か言うこともないので通り過ぎようとすると、
「かき氷おいてないんで。」
と呼び止められた。そうだろう、いささか売り上げを見込むにはまだ季節が早い。
「なんでのぼり」
シンプルと言うべきか、いやただの手抜きっぽい白い旗はそれでいて意外と目立つ。用もないのに思わず言葉を返してしまった。
「なんとなく」
「あ、そうですか」
「かっこいいし」
「まあ、はい」
「ほんじゃ」
呼び止めておいて一方的な奴だった。
その足でかき氷機を買いに寄った。ペンギンのやつにした。
帰宅後、無心に氷を削った。しかし食う気は起きなかった。こんもりとした氷が水になりきるまで見つめていた。少し、机に水が零れた。
先日、目にしてから何度も読み返してしまいました。
持ってる人の文章だと思います。
これに比べたらわたしの書くものなどまがいものでしかない。
七夕野郎全小説集さん、遅ればせながらレスありがとうございます。
意味のない言葉の羅列ばかりしていた私ですが、少し物語性のあるようなないようなものを書き始めたのは七夕野郎全小説集さんの書くものを読んだのがきっかけでした。
才能とはまぐれを操作出来ることだと思っています。今後とも精進しますのでよろしくお願いします。