「いらっしゃい.....あれ?」
入った瞬間店員から声がかかった。
「白帆さんですよね?!」
あれぇ???
この声、この顔...
「桜尾です。朝会った」
やっ...やっぱり...。
何で桜尾さんが??
もしかしてここ....
「ここ、僕の店なんです。開店したのは昨日なんですけど、白帆さんがお客さん第1号です」
「え...本当ですか?」
「はい。この店開くためにこっちに越してきたんです」
店を開くため?こんな人気のない田舎に??
普通、こんなところに店開くだろうか...。
「昔から骨董品が好きでさ、色々買ってたんだ。家にためてたんだけどかなりの量になっちゃって、兄弟が迷惑がってさ。それでどうせ売るなら自分で店開こうかなって」
いきなり馴れ馴れしく喋りかけてきた...。
「あっ、ごめんね。いきなり馴れ馴れしくしちゃって。嫌だよね」
この人、エスパーか?
「いえ、大丈夫です。ところでどうしてこんな田舎にお店を?もっと都会にすればよかったのに」
彼は少し考えこむような顔をした後、
「特に理由はないよ?ただ何となくここが好きだから」
「へぇ。そうなんですか」
「じゃ、ゆっくりしていってね」
''ただ何となくここが好きだから''
そういう彼はどこか遠くを見据えていた。