可愛らしい置物があったり、すごく古そうな本が置いてあった。
「そういえば、白帆さん、大学生だったよね。将来の夢とかあるんですか?」
桜尾さんは店の奥で商品の整理をしながら尋ねてきた。
一番聞かれたくない質問だった。
私の将来の夢.....。
私が答えられずにいると、彼が話し出した。
「夢ってさ、いつまでに決めればいいんでしょうね。僕はまだ決まってないんだ。あっ、ちなみにこの店は僕の夢じゃないですよ。邪魔って言われたものたちを売るためにやってるんです。全部売れたら閉めますよ」
「そうですね」
夢......。
「僕はこの店をやりながら見つけていこうと思っているんです。ゆっくり見つけていこうかなって。時間は余るほどあるし」
ゆっくり。
私もそうしていいのだろうか......。
「あっ」
少しの間沈黙があった。
それを破ったのは彼の方だった。
「白帆さん、雨降りそうですよ」
そろそろ帰れ、ということだろうか。
「雲行きが怪しいから。夕立にうたれてしまう」
心配してくれているのか。
でももう少し、もう少しだけ.....
「手伝っちゃ駄目ですか?商品の整理」
彼と話がしたかった。
「えっと....僕はいいけど...大丈夫なの?...その..帰ってやらなきゃいけないこととか....」
「大丈夫です。どうせ家に帰っても暇なだけなので」
「そう。ならお願いしよう」
それから
彼と話した。
お互いの趣味や特技、どんな人間なのかを。
商品の整理をしながら。
「よし。大体綺麗になったよ。ありがとう」
もう外は暗い。
ここからあの団地まではさほど遠くないし、
何より桜尾さんも同じ団地だ。(しかもお隣。)
「鍵、閉めるよ」
ガチャン.....
雨は止んだようだ。まだ少し空気が湿っている。
「♪明日はきっといい日になる~♪」
桜尾さんが小声でいきなり歌いだした。
「その曲、知ってます。いい曲ですよね」
「うん。すごくいい曲だよね」
あっ、またあの顔だ。どこか''切ない''あの顔.....。
「この町で、ある人が亡くなったんだ......」
もう私に心を許してくれたのか、この町にあの店を開いた経緯を話してくれた......。