私のことも含めて、すべてのことを忘れてしまったあいつ。記憶を取り戻すことは簡単ではないらしいが、不可能でもないという。だから私は、あいつの記憶を取り戻すのに必死だった。
しかし、どんなに頑張っても思い出してくれない。
「お願い…何かひとつでいいから、思い出してよ…‼︎」
「…ホントにすまない、そしてありがとう、俺のことを気にしてくれて」
「お礼なんか言わなくていいの!貴方の記憶、絶対に取り戻してみせる!」
私はひたすら、あいつとの思い出を話した。昼休みにみんなで鬼ごっこをしたり、喋ったりしたこと、文化祭の合唱コンクールで優勝したこと…
なのに、あいつは何ひとつ思い出せなかった。
「ごめん、やっぱり無理だ」
「そんなこと言わないで!これから先、何もわからないまま生きていくつもりなの?そんなの…ダメに決まってるじゃない!」
「…わかった。じゃあ、あとひとつだけ、聞かせてくれ、俺との思い出話。1番の、思い出話を、さ…」
「…わかったわ、じゃあ、あとひとつだけ」
「ある雨上がりの日、一緒に夕日を見たのよ。私もはっきりとは覚えてないけど…ものすごく綺麗な夕日でね…」
その時、あいつの瞳の色が変わったのが私にはわかった。
「雨の日…夕日…」
「…え…⁇」
「思い出した、わかった…‼︎一緒に見たな!思い出せた…‼︎」
「…やった…やった…‼︎‼︎」
そして、あいつは私に抱きついてきたのだった…
あいつが記憶を失う前から、私はあいつが気になっていた。
今日の天気は雨。あの日も雨。
今日も雨の日に笑いあっている。しかし、あの日の笑顔よりも、今日の笑顔の方が、眩しかった。そして、雨なのに、晴れていた。
やっぱり雨の日がいちばん好きです。
雨降りの日に雨上がりの夕陽を思い出すなんて、素敵すぎて泣きそうです!
記憶喪失と云えば、花とアリスって映画を思い出します。これとはぜんぜん違う話だけど(笑)
この二人にも、これからは雨降りが嫌いじゃなくなってくれればいいな、なんて思いました。
遅くなったけど完結編を有り難う。
シャア専用ボールさん、いつもいつもレスありがとうございました!最後まで読んでいただけてほんとに嬉しいです!これからも何か書くつもりでいるので、また読んでくださいね!