『骨董屋』の古びた扉がゆっくりと開かれた。
ギギィ…
「あなたは確か…?」
「君って…」
「夏目くん?!」
夏目 阿栗くん。最近大学で噂されている花と本が大好きな男子。
まさかこんなところでお目にかかれるとは....。
「えっ.....僕のこと、知ってるんですか?」
夏目くんは驚いた顔をした。
自分が噂されていることを知らないらしい。
「結構有名ですよ、夏目くん」
「そうなんですか?!」
意外だ…って顔をしてる。
「ん?知り合いなの?白帆さん」
桜尾さんが、空気が読めなかったらしく直接聞いてきた。
「知り合いというか、同じ大学なんです」
話したこともないのに知り合いだなんて言えないし。
「白帆…もしかして茜さんですか?」
えっ?アカネ?あぁ、茜ね…。
「私は茜じゃないです。茜は私の姉です」
白帆 茜は私の双子の姉。
生まれつき天才肌で楽器は弾ける、勉強は完璧、人もいい、人気者だ。そりゃあ、夏目くんも知ってるだろう。
「あっ、妹さん…。双子ですか?」
「はい」
姉の話題になるとつい素っ気なくなってしまう。
別に姉が嫌いな訳ではない。ただ、比べられるのが嫌なだけで。
「人と比べて自分が劣ってるからって、気にすることないと思うよ」
会計をするために作ったカウンターに座り、頬杖をつき外を見ながら桜尾さんが言った。