あれ?
また……なにも言ってないのに…。
「桜尾さん…」
「そうだよ。君の予想している通りだよ」
えっ…
「えっ…?」
夏川くんも同時に言った。
「なんかね、昔からあるんだ。才能なのかな」
別に家系的なことではないらしい。
昔から人の本心がわかってしまったらしい。
「辛かったよ。聞きたくもない声が聞こえたり」
良いこともあるが、悪いことの方が多い才能らしい。
「我慢できるようにはなったんだけど、人を信じられなくなるよ」
人は、人の心は、暗い渦が巻いている。
純粋な心は、すんでいる。
と、桜尾さんは言う。
「良いことないよ。人の心なんて読めたって」
時々見せる“切ない”あの表情は、それのせいもあるのだろうか。
すべてを見据えたような表情
とでもいうべきか。
すべてわかったような表情。
闇を理解したような表情。
…きっと、桜尾さんの場合はすべてわかっていて、闇をすべて理解しているんだ。
“ような”じゃなくて。
「桜尾さんって……」
夏川くんが口を開いた。