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-季節 ⅩⅢ-

あれ?
また……なにも言ってないのに…。
「桜尾さん…」
「そうだよ。君の予想している通りだよ」
えっ…
「えっ…?」
夏川くんも同時に言った。

「なんかね、昔からあるんだ。才能なのかな」

別に家系的なことではないらしい。
昔から人の本心がわかってしまったらしい。
「辛かったよ。聞きたくもない声が聞こえたり」
良いこともあるが、悪いことの方が多い才能らしい。
「我慢できるようにはなったんだけど、人を信じられなくなるよ」
人は、人の心は、暗い渦が巻いている。
純粋な心は、すんでいる。
と、桜尾さんは言う。

「良いことないよ。人の心なんて読めたって」
時々見せる“切ない”あの表情は、それのせいもあるのだろうか。
   すべてを見据えたような表情
とでもいうべきか。
すべてわかったような表情。
闇を理解したような表情。

…きっと、桜尾さんの場合はすべてわかっていて、闇をすべて理解しているんだ。

“ような”じゃなくて。

「桜尾さんって……」
夏川くんが口を開いた。

  • 桜尾 巳汐 
  • 白帆 唯 
  • 夏川 阿栗 花と本をこよなく愛する男子 大学生
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